お菓子だけにとどまらず、お料理にも利用されることの多いりんご。日本での生産も多く貯蔵技術によって、ほぼ一年中入手することができます。
かつては「りんごダイエット」が流行したこともありました。また、「一日一個のりんごは医者いらず」ということわざもありますね。

りんごの種類
りんごの主要産地はなんといっても寒冷地。青森県や長野県のりんごは有名です。
旬を迎えるのは冬場で、早い時期から顔を出すのが‘つがる’や‘秋映’といった品種です。
加工用としてよく用いられる‘紅玉’もわりと早い時期に出回って、出回り期も短め。国内品種で圧倒的なシェアをほこる‘ふじ’は後から登場してきます。
ところで‘ふじ’と‘サンふじ’のようにサン●●という品種を見かけることも多いと思いますが、この違いをご存知でしょうか。
サン●●とは袋掛けせずに育てたりんごのことを言います。
色味の回り方は不均一なので、一見すると見た目はよくありませんが、葉つみを行わずに栽培するため、葉が作る養分が果実に蓄えられます。
‘ふじ’と‘サンふじ’では、甘いのは太陽の光をふんだんに浴びて育った‘サンふじ’の方だとされています。
りんごは生食以外にもジャムやパイ、ドライフルーツ、ジュース、お酒など幅広く口にする機会のある果物。
健康のためには果物は毎日200グラム食べたいとされていますが、なかなか定期的に果物を買う機会のあるご家庭は少なく、目標量に達していない方がほとんどです。
でもりんごはわずか半分程度でこの目標量に達することができます。
また冷暗所で保管すれば比較的日持ちも良いです。ぜひ生食だけでなく、お料理に取り入れるなどして召し上がっていただきたいと思います。
りんごの栄養
りんごは低エネルギーな食品。甘いと言ってもお菓子ではなく果物ですから、1日200グラム程度召し上がっても太る心配はありません。
栄養素では、カリウム・ビタミン類、そしてペクチンという水溶性食物繊維が豊富という特徴があります。
食物繊維は水溶性・不溶性ともにしっかり含まれていますので、便秘気味の方にも、下痢気味の方にもおなかの調子を整えるのに向いています。
食物繊維は皮に多いですし、皮の付近は甘みもありますので、ぜひ皮ごと召し上がってください。
それからりんごにはポリフェノールが含まれています。ポリフェノールとは光合成によって作られる植物の色素や苦み成分などの総称です。
赤ワインなどに含まれていることで有名ですが、りんごにも「りんごポリフェノール」と呼ばれる独自のポリフェノールが含まれています。
りんご 皮むき 生 |
りんご 皮つき 生 |
|
エネルギー | 57キロカロリー | 61キロカロリー |
水溶性食物繊維 | 0.4グラム | 0.5グラム |
不溶性食物繊維 | 1.0グラム | 1.4グラム |
カリウム | 120ミリグラム | 120ミリグラム |
β-カロテン | 12マイクログラム | 22マイクログラム |
α-トコフェロール(ビタミンE) | 0.1ミリグラム | 0.4ミリグラム |
ビタミンB1 | 0.02ミリグラム | 0.02ミリグラム |
ビタミンB6 | 0.04ミリグラム | 0.04ミリグラム |
葉酸 | 2マイクログラム | 3マイクログラム |
ビタミンC | 4ミリグラム | 6ミリグラム |
※すべて 100グラムあたりの値。
参照:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
りんごの健康効果
りんごポリフェノールとは
りんごポリフェノールの主成分は「プロシアニジン」という成分です。
カテキンがいくつか結合したような構造をしていて、水に溶けやすく、強い抗酸化作用を持つことが知られています。
りんごポリフェノールでは特に、動脈硬化の予防効果が知られています。
脂質に対する強い抗酸化力は、私たちの身体を有害な過酸化脂質から守ってくれる心強い存在です。
りんごのアンチエイジング効果
りんごにも多く含まれているカリウムは、体内の余分なナトリウムを体外に排泄してくれる作用の期待できる栄養素です。
ナトリウムの過剰摂取による高血圧は日本人の多くが直面する問題ですので、やはり疾患などで食事に制限がある方を除けばきちんとカリウムは摂取しておきたいところ。
水溶性食物繊維のペクチンは、血糖値の上昇を緩やかにしてくれたり、コレステロールの吸収を抑制してくれたりする効果が期待されるもの。水を吸って粘度を増すので、胃から小腸への食べ物の移動を緩やかにします。
りんごポリフェノールの強い抗酸化作用は、血液中の中性脂肪値上昇を抑制する、脂肪を溜めにくくする、といったことが確認されています。
抗酸化作用では、りんごにはβ-カロテン・ビタミンE・ビタミンCという、抗酸化力のあるビタミンも含まれています。
単独での働きはもちろん、相乗効果も期待できる、良い組み合わせです。
りんごに含まれるさまざまな栄養素や成分の重なる効果で、血管を弱らせる要因である高血圧・動脈硬化・糖尿病といった生活習慣病から遠ざかることができれば、身体を若々しく保つことができます。
アンチエイジングというとお肌などの外観の若々しさも気になるところですが、りんごポリフェノールの強い抗酸化作用はシミやソバカスの原因となるメラニン色素の生成を抑制してくれるので、やはりうれしい効果が期待できます。
りんごの選び方
全体に色がまわっていて、花落ちの中心部分が空洞になっているものが良いでしょう。ツルが太くてしっかりしているものは、樹からの栄養をしっかり蓄えています。
売られているりんごの表面に白い粉のようなものがふいていたり、表面が少しべとついているような感じがしたりすることはないでしょうか。
これは「油あがり」という現象です。白い粉はブルームとも呼ばれる、りんごが成熟過程で分泌したワックス質の物質。
これが成熟していくにつれて脂肪酸で溶かされていき、油をぬったようにべたついた感じになるのです。
つまりこれはりんごが自身を乾燥から守るために出すもので、よく熟して、食べごろになったサイン。おいしさの合図なのです。
切ってみると種のまわりが透き通った蜜のような見た目になっている「蜜入りりんご」もオススメ。蜜入りといっても実は甘いのはこの蜜の部分ではありません。
蜜部分は、果糖やショ糖、ブドウ糖に変わりきれなかったソルビトールが水分をすった状態です。つまりこの蜜は、りんごがたっぷり光合成をして糖を蓄えた証。
ですから蜜の部分ではなく、果肉部分に甘さがきちんとあります。
りんごは寒い地方で育つ果実です。冬場であれば冷暗所で保存しましょう。
冷蔵庫の野菜室に入れる場合には、フルーツキャップをつけたまま紙袋に入れ、その上からさらにビニール袋をかけ、しっかり封を閉じておきましょう。
りんごの食べ方
りんごに限らず、果物の糖には果糖が多く含まれています。果糖の甘みを上手に感じたいのであれば、冷やすのがオススメ。果糖は温度が下がると甘みを感じやすくなるという性質があります。
ダイエットの場合は、甘いものを控えて果物に置き換えただけでグッとエネルギーを減らすことができます。
果物に甘さを感じられれば、置き換えもそんなに苦になりません。食べる前にちょっとひと手間、冷やすだけで簡単に効果を発揮してくれます。
お料理でも使えるのがりんごの優秀なところです。切ってサラダに入れたり、すりおろしてドレッシングにしたり、甘さと酸味がバランスのよい味わいにしてくれます。
火を通しても煮崩れしにくいので、肉巻きにして火を通すのもオススメです。調味料を多く使わなくてもジューシーで、お肉との相性もバツグンです。
自分で毎朝野菜ジュースを作っているという方にも、りんごはオススメ。身体に良いとは知っていても野菜を絞っただけだとどうしても青臭くて飲みにくい味になります。
毎日おいしく飲み続けたければ、りんごを足してみてはいかがでしょうか。甘みも加わりますし、フルーティーな味わいが野菜の青臭さを緩和してくれます。
切ってしばらく置くと、切り口が褐変してしまいます。すぐに使わない場合には切り口にレモン汁をかけたり、切ってから塩水につけたりして、空気との接触を断つようにしましょう。
りんご まとめ

りんごは切ると切断面が茶色く褐変してしまうので、つい水にさらしがちですが、水にさらす時間が長いとせっかくのうれしい成分が損失してしまいます。
色の変化の気にならないような利用の時はそのままにしても良いでしょう。
皮ごとがぶりとかじれる手軽さもりんごの魅力の一つ。ぜひあますところなく栄養素や成分を取り入れてください。