梨は日本では江戸時代のころから多数の品種が各地方で誕生したと言われている、私たちとは付き合いの長い食べ物です。
みずみずしいので古くからのどの渇きを解消すると珍重されてきて、いまや秋を代表する果物の一つとなりました。

梨の種類
梨には、日本梨・西洋梨・中国梨とありますが、日頃口にしている多くは日本梨か西洋梨でしょう。
日本梨は昔から日本で食べられてきた梨で、形は球体で果汁が多い、水菓子と呼ぶのにふさわしい味わいがあります。
大きさは大変大きいものからリンゴ程度のものと種類が多く、品種では「幸水」「豊水」「新高」「二十世紀」「長十郎」あたりがメジャー品種です。皮の色も赤っぽいものや青みのかかったものなど、品種によってさまざまです。
西洋梨はいわゆる「洋梨型」と言われるような下ぶくれの愛らしい形で、明治時代に多くの品種が導入されてから、日本でも山形や長野など各所で生産されています。
生食も向きますが、西洋梨の特徴は「追熟」を必要とするところ。滑らかな食感でおいしく食べるためには少し寝かせて熟させてから食べます。水分は日本梨より少なく甘みが強い味わいです。
梨の栄養】
梨は水分が多くさっぱりとした味わいのイメージ通り、エネルギーの少ない食べ物です。シャリシャリとした食感は石細胞といわれる構造で、これは食物繊維によって形成されています。
甘みは果糖・ショ糖・ブドウ糖といった鎖の短い、消化・吸収がスムーズな糖からなっていて、ショ糖(砂糖)よりも甘味度の強い果糖が多いことでエネルギーが低い割にしっかりと甘みを感じることができます。
果糖の甘さは冷やして食べるとより感じやすいので、食べる前に少し冷やすと良いでしょう。その他には、カリウムも豊富に含まれています。
日本梨 生 | 西洋梨 生 | |
エネルギー | 43キロカロリー | 54キロカロリー |
水溶性食物繊維 | 0.2グラム | 0.7グラム |
不溶性食物繊維 | 0.7グラム | 1.2グラム |
カリウム | 140ミリグラム | 140ミリグラム |
※いずれも100グラム当たりの値。
参照:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
梨の健康効果
梨にはアスパラギン酸、クエン酸、リンゴ酸といった疲労回復に効果があると言われている成分が多く含まれています。
アスパラギン酸は、アミノ酸の一種です。カリウムやマグネシウムを運搬し、乳酸をエネルギーに変える際に働くため、疲労回復に役立つとされています。
また、利尿作用があることも知られています。
クエン酸やリンゴ酸は、有機酸の一種です。私たちが生体内でエネルギーを産み出す回路を「クエン酸回路」というくらいですから、エネルギー産生の際に必要となる成分であることがわかります。
クエン酸がエネルギーに変わるわけではなく、エネルギーを持っている栄養素がクエン酸回路を回る際のきっかけとなるような働きをしています。
リンゴ酸には、疲労物質の代謝分解を促して、筋肉に疲労物質が蓄積するのを防いでくれる働きがあります。
食物繊維が豊富なことから整腸作用が期待でき、「お腹をこわしやすい人は食べ過ぎないように」と言われるほどです。カリウムと水分が豊富なことから利尿作用もあるため、体内の余分なものを外に出す能力に優れており、種々の生活習慣病予防に効果が期待できます。
たんぱく質分解酵素のプロテアーゼを含むことから、生でたんぱく質食品と食べ合わせると、消化を助けてくれます。
大豆などにも含まれている「サポニン」という成分が、梨にも含まれています。サポニンは体内で脂質の過酸化を抑制したり、血行を良くしたり、中性脂肪の蓄積を抑えたりといった効果があるとされている成分です。
梨の選び方
軸がしっかりとしているものを選ぶと良いでしょう。日本梨では丸の形のバランスがとれているものが良いとされています。皮の色は品種に寄るものなので判別は難しいものの、青みがかった色合いの品種(二十世紀など)では、透明感のあるものを選びましょう。
西洋梨では皮の色が黄色みを帯びてきて、果実のお尻部分が柔らかくなってきたら食べごろです。
梨の食べ方
たんぱく質分解酵素を上手に利用するために、肉の下味をつける際に、すりおろした梨を加えると味もまろやかになり、消化もよくなります。
酵素は熱に弱いため、加熱をすると失活してその効果を得ることができません。たんぱく質分解酵素の利用は、加熱前の状態で考えましょう。
食べる直前に冷やすと果糖の甘みを感じやすくなりおいしく召し上がれますが、冷やし過ぎは甘みが抜けてしまうので注意しましょう。
梨 まとめ

熱っぽいときには梨を食べるといった東洋医学の家庭療法も存在していて、今も昔も私たちにとって身近な食材です。
出回り期は7月~9月頃と決して長くはありませんが、さほど高価ではありませんので季節を楽しむ果物として、手に取っていただければと思います。