ブリは冬に旬を迎え、出世魚であることから縁起物として西日本方面ではお正月にはブリが欠かせないという地域もあるほど、日本人の食生活に深く根付いている魚です。
脂ののったものがおいしいので、健康効果の期待できる魚油も含んでいます。

ブリの種類
出世魚の難しいところは、まだ成長段階にある魚の名前を知らないと同じものだと気づかないところですよね。また地方によっても少しずつ呼び名が変わるところもまた、難しい。
「イナダ」「ハマチ」「ワラサ」といった名前はわりと耳にしますが、これらはすべてブリと同じ魚。出世してブリになるものです。
またブリは冬に旬を迎えるのに対し、ブリの仲間である「カンパチ」「ヒラマサ」は夏の魚です。
ブリでお料理をしようと思ってもブリが手に入らない! などと悩んでいる目の前に、ブリの仲間の切身が置かれていた、なんてことも実はありえますね。
ブリの栄養
魚ですので良質なたんぱく質の供給源であることはもちろん、脂質も豊富です。EPAやDHAといった不飽和脂肪酸が含まれています。
脂がのったものがおいしいとされますので、養殖ものでは脂のノリも追求されています。
天然ものでも旬の時期は脂がのっていて、特に珍重されます。脂のノリはおいしさの指標となりがちですが、魚油の摂取にもってこいということ。おいしく栄養摂取できるなんて、最適ですよね。
血合部分では鉄も摂取できます。動物性食品の鉄は植物性食品に含まれている鉄よりも吸収しやすいので、血合部分も残さず食べるようにしましょう。
ぶり 成魚 生 | はまち 養殖 皮つき 生 |
かんぱち 生 | ひらまさ 生 | |
エネルギー | 257キロカロリー | 251キロカロリー | 129キロカロリー | 142キロカロリー |
脂質 | 17.6グラム | 17.2グラム | 4.2グラム | 4.9グラム |
飽和脂肪酸 | 4.42グラム | 3.96グラム | 1.12グラム | 1.09グラム |
一価不飽和脂肪酸 | 4.35グラム | 5.83グラム | 1.03グラム | 1.15グラム |
多価不飽和脂肪酸 | 3.72グラム | 3.05グラム | 1.24グラム | 1.18グラム |
たんぱく質 | 21.4グラム | 20.7グラム | 21.0グラム | 22.6グラム |
カリウム | 380ミリグラム | 340ミリグラム | 490ミリグラム | 450ミリグラム |
鉄 | 1.3ミリグラム | 1.0ミリグラム | 0.6ミリグラム | 0.4ミリグラム |
亜鉛 | 0.7ミリグラム | 0.8ミリグラム | 0.7ミリグラム | 0.7ミリグラム |
銅 | 0.08ミリグラム | 0.09ミリグラム | 0.05ミリグラム | 0.04ミリグラム |
レチノール (ビタミンA) |
50マイクログラム | 32マイクログラム | 4マイクログラム | 19マイクログラム |
ビタミンD | 8.0マイクログラム | 4.0マイクログラム | 4.0マイクログラム | 5.0マイクログラム |
α-トコフェロール (ビタミンE) |
2.0ミリグラム | 4.6ミリグラム | 0.9ミリグラム | 1.4ミリグラム |
ビタミンB6 | 0.42ミリグラム | 0.45ミリグラム | 0.32ミリグラム | 0.52ミリグラム |
※ すべて 100グラムあたりの値。
参照:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ブリの健康効果
ブリは青背魚の代表的なものなので、EPAやDHAによる健康効果が期待できます。
EPAやDHAはいずれもn-3系多価不飽和脂肪酸に属します。
脂質の摂取は質とバランスが大切ですが、今の日本人は飽和脂肪酸の摂取が多くなりがちなことが問題となっています。
また、体内で合成できない必須脂肪酸を含むn-6系多価不飽和脂肪酸は食事からの摂取が大切ですが、比較的しっかり摂れています。
一方でもっと比率を増やしたいのが、n-3系多価不飽和脂肪酸なのです。それはいずれも生活習慣病予防に役立てたいがためです。
EPAは血栓ができるのを防いでくれたり、血中コレステロール値を低下させてくれたりする働きから、循環器疾患の多い日本人にとって、そのリスク要因となる動脈硬化を予防してくれるものとして期待されています。
DHAは悪玉と呼ばれるLDL-コレステロールを減らし、善玉と呼ばれるHDL-コレステロールを増やしてくれるほか、中性脂肪の合成を抑えることから、血中脂質バランスの改善にぜひ摂りたい脂肪酸です。脳の機能を高める働きでも注目を集めています。
ブリにはこのほか、タウリンが含まれることが知られています。
タウリンはアミノ酸の一種で、肝機能を高める効果があります。
肝臓で胆汁酸の分泌を促したり、肝細胞の再生を促進したりすることで、肝臓の機能が補われます。
胆汁の分泌が促されると、胆汁の主成分である胆汁酸をつくるためにコレステロールを必要とするため、コレルテロールの低下に機能を発揮するとされています。
身体の機能を高めてくれるので、抵抗力がつき、疾病への予防・改善に働きます。交感神経を抑制する作用から、高血圧の改善につながることも明らかになっています。
生活習慣病予防というと、野菜を食べることは意識されていても、なかなか魚には目が向きませんが、魚は栄養価も高く、植物性食品からは摂りにくい成分によって生活習慣病予防にアプローチしてくれるのです。
ブリの選び方
出世魚であるブリは大きさが小さいうちから食用されるわけですが、大きさによっておいしさは異なると言われています。
40センチメートルを超えたくらいからでないとおいしさはのってこないとされ、だいだいハマチはそれに届くか届かないかくらいのサイズ。
ブリというと60~70センチメートルになってきます。養殖ものは脂がのっていておいしいのですが、なんといっても天然もので脂がのった時期のものが極上で、クセがなく脂が多いのにあっさりと食べられると言われています。
一尾や大きな身の単位で売られている場合には皮に光沢があって色がはっきりしているかを見ましょう。
切身や柵の場合には、身に透明感があるか、血合いの色はきれいな赤をしているかを見ると良いでしょう。
ブリの食べ方
定番のブリ大根やブリの照り焼きも、もちろんおいしく食べることができますが、脂のノリを意識して購入することができたら、ブリのしゃぶしゃぶも楽しめます。薄く切ったものを昆布だしに軽く通す程度で、刺身とは違った楽しみ方ができます。
脂のノリが良すぎると味がなかなか染みないこともあるので、下味をつけて調理すると良いでしょう。
ブリ まとめ

旬を知らないのもなんだか恥ずかしいし、出世魚のこともあってなかなか売り場の人に尋ねにくいということも。
ブリは思いの外、実は同じ魚だったというものや仲間が多いもの。ブリを買い求めに行ってブリがなくても代替品はたいてい手に入るでしょう。
ちょっと知っているだけで賢くお買い物ができますね。ただし栄養価を見てわかる通り、種類によって脂の含有量はずいぶん異なります。
脂が少なければたんぱく質の供給源として比較的低エネルギーで摂取が可能ですし、脂が多ければEPAやDHAの摂取もそれだけ期待できます。
どちらが良い、あるいは悪いということではなくて、目的に応じて使い分けていきましょう。