ホクホクとした食感と、甘さ、ほろ苦さを楽しむことのできる、ゆり根。
最盛期を迎える11月~2月の、寒い季節にピッタリの味わいです。

ゆり根とは
ゆり根とは、その名のままではありますが、ヤマユリの根を食用としているものです。国産品では北海道で作られているものがほとんどです。
食品成分表で「りん茎」と書かれているように、鱗状に茎が重なって一塊になっています。
根菜類らしくでんぷん質が主体で、加熱するとホクホクとした食感を楽しむことができます。
ゆり根の栄養
昔から滋養強壮の薬として中国などで用いられてきただけあって、栄養価の高さを誇ります。
主成分は炭水化物のでんぷんで、その影響でホクホクとした食感を味わうことができます。
炭水化物では食物繊維も豊富で、とくに水溶性食物繊維を多く含んでいます。
ビタミン類ではビタミンB群のビタミンB6や葉酸を含み、ミネラル類のカリウムや鉄なども豊富に含んでいます。
野菜のなかでもミネラルの豊富さは際立っているといえるのではないでしょうか。
エネルギー | 125キロカロリー |
炭水化物 | 28.3グラム |
水溶性食物繊維 | 3.3グラム |
不溶性食物繊維 | 2.1グラム |
カリウム | 740ミリグラム |
鉄 | 1.0ミリグラム |
銅 | 0.16ミリグラム |
α-トコフェロール(ビタミンE) | 0.5ミリグラム |
ビタミンB1 | 0.08ミリグラム |
ビタミンB2 | 0.07ミリグラム |
ビタミンB6 | 0.12ミリグラム |
葉酸 | 77マイクログラム |
ビタミンC | 9ミリグラム |
※いずれも ゆり根 りん茎 生 100グラムあたりの値。
※参照:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ゆり根の健康効果
ゆり根の含む栄養素のなかで、特筆すべきは水溶性食物繊維とカリウムの豊富さではないでしょうか。
食物繊維はヒトの消化酵素で消化されないため、そのまま腸に届き、排便を促したり腸内環境を整えたりする働きのある栄養素です。
日本人では、充分な摂取ができていない人も多く、意識して摂取に努めたいところです。水溶性と不溶性がありますが、ゆり根はどちらもしっかり含んでいます。
とくに多く含んでいる水溶性食物繊維。水に溶けることでヌルヌルとした粘性を持ち、好ましくない成分の吸収を妨げ、便として排泄を促します。
消化の際には胃から小腸への食べ物の移動が緩やかになることで、ブドウ糖の吸収速度を緩慢にします。
したがって血糖値の上昇が緩やかになり、身体への負担が軽く、糖尿病などのような疾患の予防にも役立ちます。
コレステロールの吸収についても、抑制する働きが期待されています。
くわしいメカニズムは全容解明されてはいませんが、おそらく便への胆汁酸排泄量を増やして、肝臓でのコレステロール合成を減らすのではないかと考えられています。
コレステロールは食事から摂取する量よりも体内での合成量に配慮が必要ですので、この働きは動脈硬化予防に大きく寄与するといえるでしょう。
カリウムは体内で細胞内外の浸透圧維持のため、ナトリウムとペアになって働きます。
そのため、余分なナトリウムを体外へ排泄してくれる効果の期待できる栄養素です。
ナトリウムの摂り過ぎは高血圧につながり、種々の生活習慣病リスクを上昇させますので、その予防は重要です。
水溶性食物繊維とカリウムの働きで、多くの生活習慣病の予防・改善に役立つものと思われます。
ゆり根の選び方
皮が白く、乾燥しずぎていないものを選びましょう。傷や黒ずみがないかも確認します。
一つ一つの鱗状の茎が、ギュッと密度よく集まって、しまっているようなものが良いでしょう。
外観に紫がかった箇所のあるものは、苦みが強い傾向にあります。
ホクホクとした食感を楽しみたいのであれば、一つ一つのりん茎が大きなものを選びようにすると良いでしょう。
おそらく売り場でも、おがくずをかけられて売られていると思います。
購入するとおがくずごといただくことができる場合が多いので、そのまま一緒にポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存すると、比較的長い期間保存することも可能です。
おがくずがない場合には新聞紙で包んでも良いでしょう。水分にはあまり強くないので、濡れないように気をつけながら保管します。
ゆり根の食べ方
食べる機会の少ない方も多くいらっしゃると思いますが、食感が似ているので、じゃがいものような調理法で楽しむことができ、調理はそんなに難しくありません。
下ごしらえでは、根元を除くと塊がはがしやすくなります。れんこんなどと同じく、すこし酢を加えたゆで汁で処理をすると、白くしあげることができます。
鱗状になった茎を一つ一つはがして、素揚げにするなど、素朴な調理も向いています。ゆでて裏ごしをしても良いので、まさにマッシュポテトのようですね。
ホクホクとしていて食べごたえがありますから、梅肉あえのような味付けにもあいます。和食ばかりでなく、乳製品とあわせるのもオススメです。
わずかな苦みは味わいの魅力の一つでもありますが、もし苦手であれば下茹でをしっかり行うと苦みが取り除かれます。
ゆり根 まとめ

葉が枯れてきて寒々しくなる時期に、植物は土の中でじっと栄養を蓄えているのですね。私たちはそのパワーの恩恵を受けているのだと感じます。
調理したことのない方には手の出しにくい野菜かと思われますが、調理は難しくないので、ぜひ挑戦してみてください。